道具は身体の延長なり。(鉛筆の持ち方)2009/11/17 14:50

ただいま、エルとジェイがW風邪で、まったりモードでーす。

サイタカ先生の講演会より1週間を経て、強く印象に残っていること(おそらくそれが現在の私にとって切実な情報なのでしょう)、それは、

「鉛筆の持ち方」

についての指摘でした。年々、鉛筆をきちんと持てない大学受験生の割合が増えている、今年は3分の2が変な持ち方をしていた、という話。「小学校1年生から彼らは一体どんな指導を受けてきたのでしょうかね、切なくなります」とも言ってましたが、これは教師としての本音だと思います。

「どんな持ち方でも、本人が使いやすければいい」という一見リベラルな方針 VS. 「伝統的な型の中には知恵があるので、初期に正しく訓練して慣れた方がよい」という一見古くさい方針。どちらにもよい点はあると思いますが、ことに道具の使い方に関してだけは、「型」の知恵を利用したほうがお得なんじゃない?というのが私の考えです。道具の存在自体がすでに知恵の伝承なのだから、利用方法も一緒に学んでおけばとても便利。その上で、改善・工夫していく可能性は無限だと思います。

便利だった道具としては、マーカーやクーピーをうまく使えるようになった頃から、太めの三角鉛筆(くもんやTOMBOから出ています)も使わせていました。3本の指で3角形を作る感覚が自然に引き出されるようです。ただ、あまり長い間こればかりに慣れさせるためのものでもなさそうです。

モンテも、鉛筆の持ち方についてこんなことを書いていました。「就学と同時に、いざ鉛筆を持って文字を書こうとしても、それ以前の基礎的な手の訓練ができていなければ、鉛筆を上手に使いこなすことは難しい」と。モンテは手の動きを重視していましたが、学ぶべきとされた主要な動きをざっと挙げてみると、

1才から2才半…落とす・引く・まわす・はさむ・通す・ボタンやスナップ・結ぶ

3才以降から就学前…折る・切る・貼る・縫う

だそうです(『お母さんの「敏感期」』、相良敦子、文春文庫より。この本の中には、教具となりそうな手作りおもちゃのヒントがたくさんあります♪)。さまざまな訓練が、鉛筆の持ち方に対してもその基礎となるのですね。

さて、個人的には、ぜひもう一つ加えたい動作があります。それは

「絞る」

ということ。ウチでは掃除をできるだけ早くアウトソーシングすべく、子どもでも使える道具を持たせてどんどんやらせていたのですが(そうすることで腰の重~い私も掃除することになるので…景気づけ&ちょっと役に立つあそびです(笑))、

小さめのウレタンスポンジを絞る・小さめのマイクロファイバーぞうきんを絞る(最初は丸めて片手で握る→たたんでからひねる)

というような動作は、力をぎゅっと入れると、水が中からじゅわーっと出てきて、なんともおもしろいものです。

そういえば、お風呂の最後に、私がタオルをすすいでたたんで絞るのも、子どもはじーっと見ています。(そのしぼったタオルを人形にして遊んだり)ここぞとばかりに、ゆっくり丁寧に動作をして見せると、小さなガーゼタオルを湯船に浸け、丸めて握りながら「じゅー!」とやってみたりします。この握力を込めるという動作は、生活やあそびの中でも少なくなってきているような気がします。

握力を込めながら、腰とハラをしっかりさせておく動作としては、下半身をしっかりさせておき、上半身で長いものを操作する

クイックルワイパー・掃除機をかける・落ち葉掃き

などがあります。

また、しゃがんで下方向に力を込める動作としては

コロコロ・カーペット用ブラシ(コロコロと同じ形ですが、エチケットブラシ方式のもの)・ぞうきんがけ

などがあります。

こういう道具を与えると、見た目でやる気になるらしく、親子一緒にやるのもなかなか楽しいものです。そういうわけで、わが家では簡単な掃除道具はたいてい2つ(または3つ以上(^-^;)あります。子どもサイズというよりは、シンプルな形で小さめのものを選び、古いのと新しいのがある、という状態なんですが。

初めて道具に触れたときは、大はしゃぎなので、危険のない限りは自由に使わせておきます。そのうち、私の動作を見て掃除のまねごとを始めたら、その時に使い方のポイントを一つか二つ教えていきます。どの道具でもよく指摘するのは

「道具が自分の手になったと思って使いなさい」

ということです。そうすると、乱暴な扱いや、腰の抜けた動作はしないものです。身体全体を使いながらもムダな力は抜け、道具がもっとも役に立つ、理にかなった美しい動作。齋藤孝が勧める幸田文(幸田露伴の娘)の文章は、この点について際だつ分析を見せています。

この「身体性の延長」という感覚は、どんな道具を使うときでも基本になるコツだと思います。他人の身体の動きを観察してまねる力や、自分の感覚と想像力も駆使するし、なにより(掃除も鉛筆持ちも)楽して上手になる…のはまだまだ先のようですが(笑)

これから外あそびにはちょっと寒い季節になりますが、家の中の小さなことでも、学ぶ機会にはなるんだなーというお話でありました(^ー^)


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