『千住家の教育白書』(本レビュー)2009/12/10 00:13

本レビューが続いております。こんどはちょっと目先が替わって、手記もの。

以前から「千住さんちは、両親とも研究者なのに、子どもはみな芸術家なのはなぜだろう?」という素朴な疑問がありまして、その辺のつながりを探るべく、ちょっとドキドキしながら、図書館で借りてまいりました。帰ってくるなり、一人あそびするジェイを横目に、一気に読んでしまいました。平易な日本語で、とても読みやすいです。

内容は、一言で言うと、

「千住家の壮絶な闘いの記録」

とでも言いましょうか。とにかく、勝手に予想していた優雅なイメージとは全く違って、度肝を抜かれました。それが一体何との闘いなのかと言いますと、

「人生を十全に生きるための闘い」

と書くと抽象的ですが、実際に生きるか死ぬかの瀬戸際という状況もいくつか書かれていて、たんなる育児手記という範囲のものではなく、人生のサバイバル記録のような重みです。

まず、最初のほうの章は、一つ読み終えるたびに涙があふれてきて困りました(^-^; いわゆる感動ものとかでもあまり泣けないアマノジャクなんですが、幼い子どもが子どもらしくある姿がありありと描かれていて、そういうのは涙腺を直撃です。家中の落書きについての、千住パパの一言が素晴らしい。

「描くなら徹底的に描け」と夫は言った。描くという行為は、子どもの唯一の自己表現であった。その形の出来不出来は問題にならない。要は真剣か不真面目かにかかっているのではないか。(p.73-74)

この「やるなら徹底的に」という千住パパの鉄の方針は、最後の最後まで続きます。彼が大局観のチャンピオンだとすると、千住ママは、主婦業のプロ中のプロです。主婦の仕事の本質は最適化だと私は考えているのですが、彼女のマネージメントは超一流。子どもがやりたいことを徹底的にやるために、とにかくそれを生活に組み込んでしまう。子ども達全員を巻き込む力も相当です。千住ママを中心に、どんなときでも千住家は「チーム」になるのです。このチームは、一見難しい状況の中であっても、確実に何かを学び取って、成長し続けます。

育児で「別段違ったことをしたわけではない」と書いていますが、確かに、目先の変わったことはしていない…しかし、

子どものやりたいことに対するサポートが、質・量ともに尋常ではない

のです。傍目から見たら、猛烈とも思える時間と手間と熱意と愛情をかけて、子どもを応援しています。しかしあくまでも主役は子どもです。サポート方法自体を学んで工夫し、努力し、維持するエネルギーには、正直驚きました。この母子の器の大きさからすると、これはもう芸術家になるしかないんじゃないかと感じたくらいです。もちろん、他の職業に就いても、同じくらいの成果を得たことでしょう(世間の注目度は変わってくると思いますが)。

個性尊重などとよく言われますが、その言葉の裏に隠れている、ほとんど命がけの覚悟のようなものを感じました。教育というものに頼りなさを感じている父母を、まず驚かせ、そして、励ましと勇気をくれる本です。


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