第1章 プルーストとイカに学ぶ ― 2010/10/01 08:45
【第1章 プルーストとイカに学ぶ】
●文字を読む脳とニューロンのリサイクリング(pp.16-37)
・読むことは、歴史上最も素晴らしい発明の一つ。
・読み方を発明できた理由:脳は新しい接続を生み出せるから。
・読字について、歴史的進化・子どもの能力獲得と発達・脳の生物的基盤と読めないこと、から考える。→Ⅰ部、Ⅱ部、Ⅲ部に対応。
・歴史と進化の両面から考察することは、読める/読めない脳の両システムに共通のアプローチ。
・脳は”オープン・アーキテクチャ”。既存の構造物と回路の間に新しい接続を生み出せる。
・文字を読む脳は、変化する。例えば、漢字と英語では経路が違う。考えは、読んだものから生じた見識や連想に基づく。
・発達(個人的・知的次元)と、進化(生物学的次元)を併せて語る。メタファーはプルースト、研究はイカを取り上げる。→識字を異なる次元から解明する相補的な手段。
・プルーストは読書を、幾千もの現実に触れることができる知的「聖域」と考えていた。触れた現実は、知的生活を一変させる力を秘めている。
・1950年代の科学者は、イカの長い中枢軸索を使って、ニューロンの発火(興奮)と情報伝達を解明しようとした。
・現代の認知科学者は、脳内の認知プロセスを調査している。読むことの成功/失敗に適応する方法は、イカの研究と相通じるところがある。
・プルーストの"聖域"と、イカは、読字のプロセスを異なる次元から解明する、相補的な手段。
・例;プルースト『読書について』からの引用文を、できるだけ早く読んでみる体験。
→本にまつわる、自分自身の思いを浮かび上がらせたはず。読書中は、自分の意識から抜け出して、他人の意識に入り込むことができる。
→認知プロセスを駆使。*このプロセスを実際に経験することで、以下の読字に関する知識が深まる。
注意・記憶・視覚・聴覚・言語プロセス。
言語プロセス…意味次元の豊かさは、知識の豊かさによって決まる。
子どもの頃の素晴らしい一日を忘れえぬものにしたもの、それは”神聖な喜び”、つまり読書である!
・読むという行動の生物学的な次元。ref.図1-1
(単語を読む)行動<認知レベル(注意、知覚、概念形成、言語、運動などの基本プロセス)<神経系の構造物(脳、ニューロン、遺伝子)
遺伝子にプログラミングされているあらゆる行動がどのように起こるかを理解するための三次元マップ
・読字自体は遺伝子プログラムを持たない。初めから学ばなければならない。←→視覚や発話(あらかじめフプログラミングされている)
・読字はいつ誕生したか?”→ニューロンのリサイクリング”によってなし得た。物体認識や視覚の特殊化の回路を、さらに特殊化。
・文字を読む脳は、視覚を概念形成および言語機能と結びつけるために設計された、古いニューロン経路を活用。(足跡→危険、道具→単語)
・脳の3つの設計原理:1,新たな接続を形成、2,脳領域を特殊化、3,情報を関連づける
→読字の進化、発達、障害のいずれの根本にもこれらの脳構造の原理が働いている。
・視覚システムの特性:高度に特殊化。特異化することによって、既存の構造物間に新しい回路を形成する能力。
・赤ちゃんは、発火準備が整った優れた能力を備えた目を持って生まれてくる。
生後まもなく、網膜にあるニューロンのひとつひとつが後頭葉の特定の細胞郡に対応し始める。
→レチノトピック構造(網膜位相対応的構造)
直線、斜線、円、弧などが網膜に映ると瞬時に、後頭葉にある特定の特殊化された場所を賦活する。
・ニューロン回路が自動回路になる能力は、レチノトピック構造と物体認識能力の他に、情報のパターンを表象する能力。
・細胞ネットワークの”同時発火”を学習すると迅速に検索できる視覚情報を表象。
・連携を学習した細胞ネットワークは、視覚情報が存在しない場合でも、表象できる。
・文字を思い浮かべるだけで視覚皮質にある特定のニューロンが賦活するという実験。
・読字の秩序ある発達過程は、読字にかかわる主要な認知システムや言語システムすべてに共通。
・文字を読む脳と内的思考は驚くほど類似している。
・読字は、脳の構造を進化させていく能力を反映しているが、同様に、読者が本文と著者によって示されたところを越えて思考を広げていく能力も映し出す。
プルーストが書いたことを、自分自身の考えや個人的洞察と無意識に結びつけ始めた。
・筆者はモネの『印象:日の出』と結びつけた。
プルーストもモネも、情報の断片を使って、完璧に再現した場合以上に鮮烈な印象を与える合成像を生み出していた。
プルーストとモネは、間接的なアプローチを用いることによって、読者と鑑賞者を自ら作品の解釈に参加させ、その過程で、自らの解釈をより直接的に体験させている。
・文字を読むという行為:ニューロンの面でも知能の面でも、まわり道をする行為。
・読字からデジタル情報への変化。
マイナス面:推論・分析・批評によって処理するだけの時間をかけたり、処理する意欲がわいてくるだろうか?
ややプラス面:増え続ける情報を統合。複数の情報処理方法。
・連想は、読字の中核にある生成的な特性の不可欠な要素。
・読むものと文章の2つの関係。文字通り具体的に読むか、解釈を膨らませて生成的に読むか。例:聖書
・本書の主眼は、読字の生物学的・認知的側面に置く。(文化・歴史的な側面ではなく)
読字の生成能力は、脳の回路配線に備わった柔軟性に似ている。与えられたものの特性を超越すること。
・読字は、脳が認知を飛躍的に発達させる能力を反映と共に再現している。読書は自分の考えを引き出すものだ by プルースト。
・読字は、体験すること自体が目的なのではなく、むしろ、ものの考え方を変え、文字通りにも比喩的にも脳を変化させる最良の媒体。
・本書の目的は、さまざまな学問分野を統合して、書記言語の3つの側面
1.文字を読む脳の進化
2.文字を読む脳の発達
3.文字を読む脳のバリエーション
に対する新しい見方を紹介する。
●口承の文化から文字の文化へ、文字の文化から新たな文化へ(pp.37-38)
・書記言語の起源:シュメールの楔型文字、古代エジプトの象形文字、クレタ島の原始アルファベット。
・書記体系によって、脳への要求が少しずつ異なる。
最古の書記体系から、アルファベットに至るまで、2000年余りかかった理由。
・アルファベットの原則:音声言語の単語は、限られた数の音の組み合わせから成るものであり、それらの音は、限られた数の文字の組み合わせによって表される。
この原則によって、すべての話し言葉を文字で書き表すことができるようになった。
・ソクラテスは、アルファベットと識字能力(リテラシー)の習得に異を唱えた。
理由:口承文化から文字文化へと移行するなかで人類が失ってしまうだろうものについて語った。
ソクラテスに対するプラトンの無言の反抗(言葉を書き残した)は、現代にもそのままあてはまる。文字文化からデジタル情報へ。
●読み方を学ぶ幼い脳--生後5年間の環境が将来を左右する(pp.38-41)
・書字の歴史と子どもの読字能力の発達は結びつく。
1・人類は、読字学習に必要な認知能力を飛躍的に発展させるまでに2000年かかった。
子どもは2000日で同じレベルの理解を強いられる。
2.読字を習得するためには、視覚と言語用にある脳の構造物を接続しなおさなければならない。
・ピンカー曰く、「子どもたちにとって音の配線はすっかり揃っているが、活字は苦労してボルト留めしなければならないオプションの付属品」
・回路部品すべてをサポートする教育環境が必要←→読字の主要な構成要素一つか二つに的を絞っている現在の教育方法
・読字発達期(幼児期から青年期)を理解するためには、脳の回路部品一式と発達の仕方を理解する必要がある。
・読字学習は幼児期から。生後5年間の読み聞かせの機会の量が、後の読字能力を予測する最良の判断材料のひとつ。
・階級制度の問題。言語面で恵まれない家庭と、言語刺激の豊かな家庭では、幼稚園に上がるまでに3200万語の開きが生じる。
・状況の打開には、読字の前段階の知識が役に立つ。
読字初心者の脳の回路と必要条件は、熟達者の脳とどれほど異なっているのか。
ある種の読字障害を予測し、改善し、予防するのに役立てることができる。
今では、診断や教育に使える、読字の構成要素に関する知識がある。
デジタル時代の今だからこそ、これらの知識が、文字を読むうえで失ってはならないものを示してくれる。
●ディスレクシア(識字障害)と情報イリテラシー(pp.41-44)
・読字障害(ディスレクシア)について知ると、読字の前段階に関する基礎的な知識が、別の角度から見えてくる。
・素早く泳げないイカの子どもの研究と似ている。
このイカと他のイカとの配線の違いが、泳ぎに必要なことと、泳げなくても生き残って繁殖していくための独特な能力について教えてくれる。
・正常な脳とディスレクシアの脳の活動を追跡記録して、ニューロンの地形図を作成している。
・神経イメージング研究より、ディスレクシアの脳の、これまで考えられていたところとは異なる実態が明らかになりつつある。
ディスレクシアの脳の発達がもたらす恩恵の解明。
実に多くの、発明家・芸術家・建築家・コンピューター設計者・放射線科医・資本家が、子どもの頃にディスレクシアであった過去を持っている。
設計や空間能力、パターン認識を必要とする職業における類い希な想像力は、ディスレクシアの脳の何からきているのか。
文字を持たなかった時代の要求に適している?視覚的な技術中心の未来にこそふさわしい?
・進化の過去と同時に、象徴機能の発達の未来にも目を向ける必要がある。
本からインターネット(多次元化された”継続的な注意の断片化”の文化)へ。
何を失い、何を獲得?どんな意味を持つ?時間のかかる深遠な知識の形成を脅かすことにはならない?
・Googleは一種の情報イリテラシーを普及させているのではないか? by エドワード・テナー
・識字能力が別のスキルに取って代わられてもおかしくない今、私たちが失いたくないと望んでいる識字能力によって向上する知的スキルの真価がはっきりと見えてくる。
・本書にまとめた所見は2つのパートに分かれている。
1.識字の特殊な側面を守り続けるために、社会全体として必死で取り組むための真実。
音声言語と識字能力のどちらかを選ぶ必要はない。
知的レパートリーに新しい次元を追加しても、文字を読む脳の深遠な生成力を失わないように気をつけることが大切。
2.最終章では、既知の情報の枠を超えて、直感と推量に頼るほかない領域まで。
以上が第1章。
第2章 古代の文字はどのように脳を変えたのか? ― 2010/10/04 16:28
【第2章 古代の文字はどのように脳を変えたのか?】
●”読むこと”の始まり(pp.46-)
・書字は、1万年前からいろいろ生まれた。
・読字の発生は偶然ではない。文化の変容と並行した、認知と言語の飛躍的向上の集大成。
・さまざまな書記体系が、脳の順応を要求した理由、思考方法の変化の作用。
・書字の誕生でのひらめき
1.シンボルによる表象
2.シンボルの体系化
3.音とシンボルの対応(すべての書字ではない)
●人類が初めて口にした言葉?(pp.48-)
・君主たちの記録(赤ちゃんを閉じ込めておき、初めて発した言葉を記録)
1.エジプト王プサメティコス一世(紀元前664~610)
「パン」を表すプリギュア語
2.スコットランドのジェイムズ四世
達者なヘブライ語
3.神聖ローマ帝国フリードリヒ二世
話し始める前に死んでしまった
・書字は、一度の発明か?いくつ発明が積み重なったのか?
・本書では、紀元前8000年紀~1000年紀の書記体系数種の起源までさかのぼる。
脳の順応と変化の歴史が潜んでいる。
●文字の起源ーーシンボルと認知の飛躍的向上(pp.49-)
・クレイトークン(粘土片)(紀元前8000年~4000年)
会計システム。売買された品物の数。
・数字と文字の発達は知的スキルの発展も促した。在庫を数えられる。永久記録。
・新しい能力の発生。物体を目に見える記号によって象徴化できるという、シンボルによる表象を使用する能力。
・シンボルを読む脳には、接続が2組必要。
1.認知領域と言語領域間の接続
2.左右の脳の接続
・脳イメージング研究にヒント
課題:意味のないシンボル(線)、意味のあるシンボル(正しい文字)、意味のない単語、意味のある単語
線;後頭葉の限られた視覚野のみ(ref.レチノトピック構造)
文字;脳の活動は2~3倍
→クレイトークンを読めたのは、第1次視覚野を隣接する(後頭葉、側頭葉、頭頂葉の)視覚・概念領域と接続できたから
側頭葉:単語の意味を理解するのに役立つ、聴覚・言語プロセス
頭頂葉:言語関係のプロセスと空間認知機能および計算機能
さらに、「意味」があれば、視覚と聴覚に特殊化した連合野にも接続
・象徴化のために活用・拡充される脳の特徴2つ。
1.特殊化の能力
2.連合野間に新しい接続を形成する能力
・人間と他の霊長類との最大の相違のひとつは、連合野に割いている割合。
感覚情報の処理、情報を将来利用するための心的表象の形成を司る。
・シンボルの使用でも、知的生活でも、表象能力は重要。
情報を想起して検索するのに役立つ。事実上自動的に認識できる。
・シンボルを読む→視覚野の特殊化だけでなく、視覚表象を言語情報および概念情報と結びつけることが必要
”連合野の連合野 by ゲシュビント”脳後部の3つの脳葉の接合部に位置する角回領域。
・角回領域の損傷が、読み書き障害につながる。
・イメージング研究より、読字が発達を続ける間は角回領域との経路が著しく活性化された状態にある。
・クレイトークンを読む生理的基盤
角回領域を近くの領域と接続
計算能力に関与する側頭葉のいくつかの領域や、物体認識にかかわる後頭-側頭領域(37野)とも接続する、小さな回路。
人類史上初めて、読字における認知能力の飛躍的向上をもたらした。
●楔形文字ーーロゴシラバリーの登場と脳内回路の拡張(pp.55-)
・紀元前3300~3200年、第二の飛躍。
個別に用いられていたシュメール文字が楔形文字体系へ→後のアッカド文字体系
エジプトの記号がヒエログリフ体系へ
・シュメール語の書字体系は書字の進化で画期的
書き手と読み手と教えるものに認知スキルが芽生えた
・抽象化が脳に要求する能力は、クレイトークンとあまり変わらない
ピクトグラム:表象する物体に視覚的に似ている図形。絵文字は視覚システムが容易に認識。
デハーネ説:書記体系と数字体系のシンボルと文字の多くは、それぞれが対応する物体と共通性の高い視覚的形状と特徴を備えている。cf.ユーゴー説
ピクトグラム的シンボルは、物体認識と命名に用いられていた脳の回路をリサイクリング。
・楔形文字は、発生からほどなくして、謎の進化。
ピクトグラムの面影を失い、表語文字(個々の文字が単語や形態素を表す書記体系)の要素と抽象性を増す。
表語文字の書記体系は、音声言語に含まれている概念を直に伝える。
さらに時が流れるうちに、口語のシュメール語に含まれている音節をも表す。
・一つの書記体系がもつこの二重構造を、言語学者はロゴシラバリーと呼ぶ。→脳に多くを求める。
・二重機能(音節や音/意味カテゴリー)を実現するために、脳に必要とされること。
1.数百字もの楔形文字を解読するために、視覚野と視覚連合野に、多くの経路が必要。
2.概念面の要求から、より多くの認知システムが必要。
後頭葉の視覚野、側頭葉の言語野、前頭葉(分析、計画、注意の集中などの実行スキル)
・一つのシンボルが、意味と発音の両方の役割をこなす(判じ絵原理)。また、音声標識と意味標識。
・シュメール人の脳を想像する方法
1.同じ文字を使って、並び順を変えた、無意味単語と正しい単語をどう読むか?
最初は同じ視覚野→無意味単語は、視覚連合野で賦活をやめる。正しい単語の場合は、活発に動き始める。
2.現代のロゴシラバリー書記体系から類推
中国語に類似要素が多い。
より全体的な処理に寄与する、右半球の領域を活用。
視覚野+37野(物体認識) デハーネによれば、リテラシー(識字能力)における「ニューロンのリサイクリング」の中枢。
表語文字体系が賦活させる前頭葉と側頭葉は独特。特に、運動記憶に関与している領域。繰り返し書くという漢字学習方法。
●現代の最先端をすでに実践していたシュメールの読字教育(pp.62-)
・シュメールの読み方の教師は、書記体系の教え方に習熟。
・シュメールの生徒が読み書きを覚えるには何年もを要した。粘土板の表に教師が、裏に生徒が、楔形文字を刻む。
・語彙リストの存在。意味カテゴリー/共通する発音による分類。
・20世紀の教育者が、最良の読字指導方法は音声学的方法か、意味に基づいた方法か?と議論するよりはるか以前から、シュメール人は、両方の要素を書記の指導に取り入れていた。
・シュメール語の書字がもらたした効用は、指導方法が概念の発達を促したこと。
意味的・音声的に関連した単語を生徒たちに強制的に学ばせたことが、単語を効率よく想起し、語彙を増やし、概念知識を深めるのに役立った。
・シュメール人は、最初のメタ認知ストラテジーを読字教育に採用した。明示的な手段で、学び方と覚え方を教えた。
・形態論的特徴をもつ単語も学ぶ。複合能力。
・ハナジロザルも、言語における複合能力に似た音声体系を持っている。
・読字教育は、音声言語の主要特徴に明示的、つまり意識的に注意を払うところから始めるべきである。最先端カリキュラムによって実践。
・音声言語の特徴を把握→重要な言語の原理→教育と学習を促進、認知スキルと言語スキルの発達にも拍車
・シュメール語には2種類があった。
1.標準語(エメギル:威厳のある言葉)
2.女性語(エメサル:上品な言葉)
女性語の単語の多くは発音が異なる。
●シュメール語からアッカド語へ(pp.67-)
・シュメール語が死語となり、アッカド語の書記体系と教育方法に、シュメール語のシンボルと教育方法が数多く引き継がれた。
・アッカド語は、メソポタミアの大半の人々が用いる言語となった。有史以来最も重要な古文書数点。『ギルガメシュ叙事詩』
・多彩な文学ジャンル→知識基盤に貢献。
・アッカド語の問題点。音節構造が単純(日本語やチェロキー語と似ている)。
→一つのシンボルが個々の音ではなく音節をあらわす、音節文字の書記体系がうってつけ。
・アッカド語における、音節文字と表語文字の折衷。他の言語でもしばしば用いられている手段。
・英語:ギリシャ語、ラテン語、フランス語、古英語などのルーツ。
形態音素の書記体系:スペリングで形態素と音素の両方を表す。
例; muscle に含まれる、発音されない "c" 。語源となったラテン語にルーツがある。形態素を視覚的に伝えている。
音声言語の個々の音の表現と、単語のルーツの表示という、2つの機能の妥協点。
・古代アッカド語の書記体系をマスターするまでに、シュメール語と同様、6~7年を要した。
・読み書きできるのは、何年も勉強を続けられる贅沢な身分の人々に限られていた。悪い方向への政治的影響力。
●ヒエログリフが育んだ活発な脳(pp.72-)
・長年にわたり、エジプト文字はシュメール語の書記体系から派生したものと思われてきた。
・エジプトの書記体系が紀元前3100年頃に全く独自に発明された、新たな証拠。もしかしたら紀元前3400年?
→文字を読む脳の進化において、最初に大きな順応を導いたのはヒエログリフ。
・本書では、シュメール語とヒエログリフは別個に脳の順応をもたらした存在とする。
・ヒエログリフは表語的なサインに、子音を表記する特別なサイン(表音文字)を加えた、混合型の書記体系へと進化。
・”家”を表すヒエログリフが、他の表語文字の後に書き加えられれば、複合子音”pr”とも読むことができる(=音声標識、補語)。
・一つのサインにたくさんの用途があるため、多様な認知ストラテジーが必要。認知的判断と柔軟性も。→活発な脳
表語文字;視覚と概念の接続
子音サイン;視覚システム、聴覚システム、音韻システム間の接続
音声標識と意味標識;音韻・意味分析の能力と併せて、抽象化と分類の能力
・しかも、一行を左から右へ、次の行を右から左へと書いていく、ブストロフェドン(”牛耕法”のギリシャ語)書法。
・エジプト語が、他の書記体系と異なる、2つの変革
1.2種類の筆記体を持つ
2.音素に相当するものの発見。新語・外来語の表記が容易←判じ絵原理の限界がなくなる。日本語の漢字+仮名に似ている。
この発見は、エジプト人の音声言語に含まれている子音を表記できる、少数の文字のサブセットを取り入れ始めたから。
→”子音のための不完全なアルファベット” by ピーター・ダニエルズ
後の、認知の第3の飛躍につながる。→単語の音を基にした内部構造をベースとした書字体系。
・ヒエログリフが複雑であったからこそ生まれた、エジプト語の子音のための不完全な書記体系は、アルファベットに進化に唯一最大の貢献。
●竜骨・亀甲・結縄ーー他の古代書記体系に見られる興味深いサイン(pp.76-)
・書字は紀元前4000年世紀の終盤に、3回、その後もさらに3回にわたって、世界のあちこちで発明されたようだ。
・エジプト語とシュメール語の他に、インダスの書記体系も、紀元前2500年ごろには文字へと進化。
・その後、
紀元前2000年世紀、クレタ島でクレタ文字。線文字A(クレタ・ヒエログリフ)と線文字B(第3章参照)。
マヤの書記体系(ロゴシラバリー;表語文字と音節文字の組み合わせ)。メソアメリカの結縄は、インカの書記言語体系?
古代中国の書記体系。紀元前1500~1200頃から。それ以上前?竜骨に記号体系。亀甲や牛の肩胛骨に初期の漢字で記したもの。
→混合型のロゴシラバリー。
中国語が、他の古代書記体系と異なる点
1.今でも現役である
2.ピンインという書記体系(音節を音素文字で分割し、それらを組み合わせることで表記できるようにした書記体系)
読字の初心者は、読み書きの概念を把握するためにピンインを学ぶ。
3.女性だけが使っていた古い書記体系がある。音声記号で表した完全な音節文字。
→音声ベースの書記体系、音節文字およびアルファベットへの移行がスムーズに行われることを物語る例。
術後1ヶ月。 ― 2010/10/04 16:32
退院後初の外来の記事アップしたっけ?術後3週間目だったのですが、順調ということで、3ヵ月ごとのフォロー(血液検査&エコー、半年後の時だけCTあり)を1年間続けて終わりだそうです。
術後1ヵ月後ですが、傷はもうあまり気になりません。すっかり慣れます。ただ、筋肉が壊滅状態なので、長時間動いていると、背中が疲れます。2~3時間に一度は座るか横になることを推奨。
あと、育児の必須アイテムである、走る・せかせか動く、がまだまだです。すり足で高速歩行とかが限界。足場を固めてあせらずに動くことが大事。
以前のペースで生活を回すには、まだあと1ヶ月ほどかかるかなーと見積もっております。
ハーフサイズになったすい臓さんが、なぜかカラータイマー化しています。疲れると、しくしくと痛むのです。ま、私のように、自分のキャパをわきまえず無鉄砲に動いてしまう人間にはちょうどいいのかも(^-^;
幸い、食事のことですい臓系の不都合を感じることはほとんどないです。胃が小さくなっているほうがよっぽどこたえます。食べ物がなかなか流れていかず、胃もたれ状態になることがたまーにあります。とか言いながら結構食べてるけど(笑)
この様子なら、腹八分目、暴飲暴食を避ければ、一応フツーに暮らせそうです。よかった。
運動を始めたら、またすい臓さん関連の記事にしたいと思っています。
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