音声と視空間とのやりとり(6才の計算手続き、その2) ― 2009/10/14 10:21
前記事で、くり上がり部分の計算手続きの難しさについて、ワーキングメモリというモデルを利用して、
「計算中の数は視覚・空間的情報として格納され、
計算が終わった答えは音声情報として格納される。」
という仮説を持ち、また、それらを数の性質と対応させて、
音声→基数
視覚・空間(+ 身体感覚)→序数
というグループ分けをしてみたのですが、こんどは、それらの両情報をどうやってやりとりするのか(おそらく、この二つの表現形式の違いおよび行き来が、文章題の根本的難しさではないかと予測中)について、観察から得られた情報を元に、考えてみたいと思います。
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まず、基数的表現を序数的表現にするための工夫。
文章を読む場合でも、声に出して読み上げられた問題を聞く場合でも、基数表現は、案外混み入っています。
「1個」、「2個」、「3個」、→基数+数詞(=具体物)
「ひとつ」、「ふたつ」、「みっつ」、→基数(=数量に焦点)
「いち」、「に」、「さん」、→数(=一般化)
この3つでは、下に行くほど抽象度が高いですが、この一番下の「数」を使って、それらを「順に並べる」ことで、基数が序数となります。つまり、
「いーち、にー、さーん、」
と、同じリズムで、いつも決まった順番で、数唱するのです。これを数唱じゅずつなぎと呼ぶことにしました。イメージとしては、1と2をつなぎ、2と3をつなぎ…というように、高級真珠のネックレスのように(どこが切れても全部がバラバラになることはない)、ひとつひとつをつないでいく感じです。
ここでちょっと気になるのは、4(し、よん)と7(しち、なな)と、9(く、きゅう)です。数唱じゅずつなぎをより強化&自動化するためには、音声は常に同じにしておいたほうがより効率的ではないかと思います。そこで、九九に合わせて、「し、しち、く」を採用します。
この序数を手で表現する時は、両方の手のひらを自分の方に向け、左手の親指→人さし指→中指→薬指→小指→右手の小指→薬指→中指→人さし指→親指、というふうに、左から右へと順に使っていきます。これは、数え上げをする時にみられる使い方です。
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次に、序数的表現を、基数的表現に戻す方法。
これは比較的簡単です。じゅずつなぎの中のひとつを切り離して、独立させてしまえばいいのです。前後の数との関係性が消え、一般的な形のひとつの「数」になります。
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以上をふまえると、数え上げでは、次のようにして、序数と基数をやりとりします。
1.足される数(+ の左側にある)を言う(→声で確認)。
2.その次の数を、左手の親指にくっつける(→声と身体感覚で確認)。
3.数唱じゅずつなぎの一つ一つを指にくっつけながら、右に進む。もし右端までいったら、左端へ戻る。(→リズムと身体感覚で確認)
4.足す数(+ の右側にある)の指に着いたとき(→視覚で確認)に、くっついていた数(→声で確認)が答え。
ワーキングメモリのしくみと対応させると、「声」は基数的、「身体感覚・リズム・視覚」は序数的な表現となります。これら両方の表現を一緒に行う、2.と4.の過程が、負荷が高く、より難しい部分であるということになります。
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ここまでの仮説のまとめです。
音声→基数→数のまとまり
視覚・空間( + リズム・身体感覚)→序数→数の操作
…今日は、ここまで♪
↓そろそろ、頭の中の認知を離れて、生活場面に戻りたい(^◇^;)
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